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興福寺の夜を待つために日の沈むのを眺めていたら、南円堂の前の自販機が目に入った。前々からこれを上手く撮りたいと思っていて、南円堂も枠内におさめ、幾枚か撮影するも自販機の灯りがか弱い。
南円堂は東面し、自販機は一つを除き北面しており、直交している。いい具合に顔をこちらに向けてもらうには、斜めから撮る他ない。自販機の機嫌をうかがいすぎると南円堂の正面性が損なわれるし、加減が難しい。


いい塩梅に松も立っている。松の全体を入れ込むと自販機とお堂の印象が弱くなるか、否、松が左に視線が行くのを遮るのでかえって強くなるのでは、などと構図を模索している内に自販機の輝きは増し、ついには空に伍するまでになった。


普段、マジックアワーのような時間帯を決めて出掛けることもないので、これがあのブルーアワーかと得心した。




東大寺大仏殿と猫段上の売店横の自販機も、ちょうど同じ位置関係にあるな、と思い出したので、後日、天気の良い日に向かった。二月堂で日が沈むのを見届け、一目散に向かう。


南円堂に比べ、大仏殿から自販機の距離があるので、角度に余裕がなく、木々も遠くを隠し、カメラ位置の制約は大きい。また、南円堂の経験から、石畳も視線をお堂へ誘う線として用いることができる、と想定していたが、自販機や外灯からやや離れており、暗く厳しい。
制約が大きいということは、探るべき domain も絞られるので、いい面でもあるのだが、得られる極大が高々ということもあり得る。地形の現状変更は倫理的に行えないので、どうしようもないことではあるが。


また、二台の自販機を結ぶ線の先に大仏殿が大まかにあってほしいし、大仏の瓦は暗く見づらいので、最低限、鴟尾と屋根の反りのシルエットははっきりと見えて欲しい。
こんな感じでどんどん条件を課していくと、あまりよろしくない局所解に嵌まる危険性もあり、帰って写真を見返した際に後悔することも多いのだが、時間も限られるし仕方がない。




そういえば、自販機と雪の素晴らしい写真があったな、と調べたら、大橋英児氏の作品であった。

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Roadside Lights I

太陽なきみそらのもとでは自販機がお山の大将であり、ダミーサンプルが煌々としている。したがって、街の景も取り込もうとすると、自販機が明るすぎる。一方、カラー写真であるし、ダミーサンプルのカラフルさも見せたい。となると、露出を変えて幾枚か撮影してHDR合成を、ということになる。しかし、ハイライトを抑えてラベルをよく見せようとすると、今度は神々しさが薄れる。眩しきもののディティールとグローの両立はなかなかに難しい。

Being There

モノクロのシリーズとなると、色彩は影を潜めるので、輝きが重視され、自由気ままに白飛びさせてある。カラーと白黒とで何を重視するのか、というのがはっきりと表れている。




興福寺五重塔のライトアップがしばらくお休みに入るので、その最終日に投光器を撮りに行った*1


帰りしな、南円堂と自販機をHDR合成用に撮影した。現像は、ハイライトを白飛びさせつつも、ダミーサンプルの範囲だけは銘柄が微かにわかる程度に明るさを抑えた。眩しきもののディティールとグローの両立は難しい。

*1:照明のデータ・シート (No.208) に投光器設置時当初の仕様が載っているが、それ以降どう更新されていったのかは追えなかった。