ケからハレへのトランジション

 カーブミラーというのは基本的に交差車線の車の存在の有無を確認するためにあるため、当然カーブミラーの中に映る世界というのは道路が中心となり空は見えても占める割合は小さい。従って、アスファルトのねずみ色が支配的な世界、これがカーブミラーの中の日常的な世界となるわけである。しかし、カーブミラーに近づき仰角が増すと、空の占める面積は広がって空の色が支配的となり、同時にカーブミラーの機能性は損なわれる。カーブミラーはただの鏡と化し、その中にただ非日常的な空間を映すだけとなる(歩いてる時にもカーブミラーをよく見る人にとってはその光景は日常的かもしれないが……)。

 カーブミラーと似たものにバックミラーがある。カーブミラーの場合機能を果たすかどうかは見る側の位置に依存するが、バックミラーの場合運転手に対するバックミラーの角度に依存する。バックミラーを普段とは異なり、ただ上向きにして空を映るようにして(危険だが)走ってみるだけでも先程と同様、今まで経験したことのない非日常的な体験をすることができるはずである。

 普段見慣れて日常的だなと思ってる空間も見方を変えたり少しの工夫をすれば忽ち非日常的空間に変化する。